<写真:danviet.vn>
テト(旧正月)を目前に控えたベトナムは、例年であれば美容室が賑わいを見せる時期である。
しかし、2026年の今年は様相が異なり、店内は閑散としている。その背景には、若者の間で広がる「黒髪回帰」の傾向がある。
近年、インスタグラムやTikTokでは「#toctradition」「#blackhair」「#naturalhair」といったハッシュタグが目立つようになり、ツヤのある黒髪や自然体のヘアスタイルを支持する投稿が増加している。
女性の間では、ナチュラルな分け目のロングヘアや、ラフにまとめたお団子ヘアが人気を集めており、男性もまた、整髪料を使わないシンプルな黒髪ショートスタイルを好む傾向にある。
ダナン市でオフィス勤務に就く25歳の女性は「染髪やパーマは髪を傷めるし、費用もかさむ。黒髪のまま丁寧にケアする方が気持ちも軽く、今のスローライフに合っている」と語る。
このような自然志向の美容観は、単なる流行ではなく、価値観の変化そのものを示している。
また、ミニマリズムの流行や伝統的な美への再評価、さらには東洋的な個性の重視といった文化的潮流も、黒髪の復権を後押ししている。
かつては変化の対象と見なされていた黒髪が、いまや個々の魅力を引き立てる「素材」として見直されているのである。
こうした変化は美容業界にも大きな影響を及ぼしている。
ダナン市の美容室経営者によれば、今年は予約が激減し、希望されるメニューはカットやヘッドスパといった、化学処理を伴わない施術に限られている。
その結果、テト商戦の売上にも暗い影が差している。
ホーチミン市にある別の美容室でも、これまでのような「スタイル提案」中心の営業から、「髪の手入れ」に重きを置いたサービスへの転換が検討されているという。
ナチュラルで上質に見える髪型の提案が、今後の鍵となりそうである。
美容室にとっては試練の時期である一方で、この黒髪志向の高まりは、個性や内面の美しさに重きを置く価値観の広がりを象徴している。
美容業界もまた、この新たな美意識に寄り添うかたちでのサービス提供が求められている。







































