<写真:baothanhhoa.vn>
近年のベトナムでは、モノの所有を重視する消費から、体験や感情的価値を重視する支出へと消費行動が大きく転換している。
音楽公演や映画、観光などへの支出が拡大し、関連産業にとって新たな成長機会となっている。
南部ホーチミン市在住の若者の中には、2025年に入ってからコンサートやフェスティバル、展示会など40件超のイベントに参加した例もある。
人気音楽公演「Anh trai vượt ngàn chông gai」には同市で5回足を運び、1公演当たり80万~250万ドン(約4800〜1万5000円)のチケット代を支払ったという。
韓国の人気歌手G-Dragonの公演では、先行購入を目的にクレジットカードを新規発行する動きも見られた。
2025年は大規模公演が相次ぎ、ホーチミン市では週末に6公演が同時開催されるケースもあった。
映画市場も好調で、民間集計によれば年間興行収入は約6兆1400億ドン(約368億4000万円)に達した。国内旅行者数は延べ1億3500万人となり、前年から22.7%増加した。
統計当局によると、2025年の小売売上高とサービス収入は前年比9.2%増となり、中でも芸術・娯楽分野が高い伸びを示した。
一方で、小売業では来店客数の伸び悩みが指摘されている。
専門家は「実用性」の定義が変化し、生活必需品よりも体験や精神的満足に資金が振り向けられていると分析している。
こうした傾向は海外でも共通している。
独スタティスタによれば、世界のライブ音楽ツアー収入は2024年に過去最高の95億ドル(約1兆4630億円)に達し、新型コロナ禍前の約50億ドル(約7700億円)から大きく回復した。
米国や中国でも娯楽関連支出の回復・拡大が報告されている。
英PwCは、世界のエンターテインメント・メディア市場規模が2029年に3兆5000億ドル(約539兆円)へ拡大すると予測している。
ベトナム国内では、制作会社Yeah1が人気番組のヒットを背景に大幅な増収を記録するなど、文化産業の成長が鮮明である。
文化・スポーツ・観光省によれば、2021~2025年の文化産業の年間平均生産額は約440億ドル(約6兆7760億円)に達し、事業所数と雇用者数はいずれも年率7%超で増加している。
波及効果も大きい。音楽公演を目的に都市間を移動する観客は、航空券や宿泊、飲食などに数千万ドンを支出する場合もある。
企業もこの潮流を取り込み、金融機関や消費財メーカーが音楽イベントや動画コンテンツと連携する動きが広がっている。
ホーチミン市当局によれば、2025年に開催された大型文化イベントは観光や宿泊・飲食業の需要を押し上げ、文化産業の域内総生産(GRDP)への寄与率は2020年の3.54%から2025年末には5.7%へ上昇した。
ホーチミン市は2030年までにこれを7.2%へ引き上げる目標を掲げ、税制優遇や信用支援、創造産業振興基金の設立、知的財産保護の強化などを進める方針である。
体験や感情に価値を見いだす消費の拡大は、娯楽分野にとどまらず、観光や金融、小売までを巻き込みながら、経済成長を支える新たなエンジンとなりつつある。







































