<写真:smartf.vn>
ベトナムでは親族や取引先との関係維持を目的に飲酒が半ば慣習化してきたが、若年層の間で、酒席における飲酒を控える動きが広がっている。
Z世代を中心に「飲まない」という選択が受け入れられつつあり、会食文化そのものが変化の局面を迎えている。
カントー市出身でホーチミン市在住の26歳男性は、テト(旧正月)の帰省中、親族から相次いで酒を勧められたものの、すべて丁重に断った。
以前は礼儀や人間関係を理由に飲酒していたが、2024年末の飲み会で体調を崩し、仕事に支障が出たことを契機に断酒を決意したという。
近年は同世代の取引先との会合もカフェで開かれることが多く、飲酒を前提としない交流が一般的になりつつあると語る。
市場調査会社NielsenIQの報告によれば、ベトナムのZ世代の45%が「酒類を控えている、または飲まない」と回答しており、ミレニアル世代の28%を大きく上回っている。
アジア太平洋地域全体でも、約35%の若者が飲酒量を減らし、13%が完全に断酒したとの調査結果が示されている。
こうした変化は飲料市場にも波及している。
世界的な酒類調査機関IWSRによると、2025年のノンアルコールビールの生産量は前年比9%増と拡大した一方、従来型ビールは1%減少した。
Z世代がいわゆる「ゼロ度革命」の中心的な担い手とみられている。
国内大手ビールメーカーの業績にも影響が及ぶ。サベコの2025年売上高は約26兆2500億ドン(約1575億円)と前年から大きく減少し、過去10年で最低水準に落ち込んだ。
消費者行動に詳しいコンサルティング会社Happiness Saigonのリン・グエン戦略ディレクターは、この現象の背景として3つの要因を挙げる。
第一は市場環境の変化である。低アルコール飲料やノンアルコール飲料の選択肢が増え、飲酒が社交の前提条件ではなくなった。
第二は価値観の転換である。無理に飲むのではなく、適切に断ることが成熟した態度として受け止められるようになった。
第三は人間関係の再定義である。酒に依存せず、対話や体験そのものを重視する交流が志向されている。
ホーチミン市在住の24歳男性も「飲まないことは障壁ではない」と述べる。職場の会食でも飲酒の強要は見られず、水で乾杯する光景も珍しくなくなったという。
専門家は、Z世代の選択が酒席の「ルール」を静かに書き換えつつあると指摘する。
酒は依然として存在しているが、親密さを示すための義務ではなく、あくまで個人の選択肢の1つへと位置付けが変わりつつあるのである。


































