<写真:nguoiquansat.vn>
中東情勢をめぐる軍事的緊張が、ベトナム企業の収益を圧迫し始めている。民間経済開発研究委員会(Ban IV)がファム・ミン・チン首相に提出した報告によれば、調査対象企業の約9割が、エネルギー価格や原材料費、物流費の上昇によるコスト増を訴えており、資金繰りや利益率の悪化が顕在化している。
Ban IVが3月16日から22日にかけて、16分野の228社を対象に実施した調査では、87.8%の企業が投入コストの上昇を挙げた。上昇幅は5〜10%が中心であったが、2割弱の企業は20%を超える増加が見込まれる。エネルギー、原材料、物流に加え、金融費用の上昇も大きな負担となっている。
特に打撃が大きいのは、物流・輸送、貿易・輸出入、工業生産、建設の各分野である。コスト上昇は製品価格や利益水準に波及し、受注の維持や企業の持続力を損なう懸念を強めている。
国際輸送の停滞も企業活動を下押ししている。52%の企業は、運賃の上昇や輸送時間の長期化、追加の荷役費用の発生に直面していると回答した。さらに53.5%の企業は、アジアや中東向けを中心に輸出受注が減少したとしており、外需の鈍化も鮮明になっている。
全体では、約63%の企業が中東情勢の影響を「大きい」または「非常に大きい」と評価した。影響は、輸送、輸出入、製造業、農業、国際サプライチェーン関連の業種で特に大きい。資金面では、借入金利の上昇、資金調達の難化、為替変動、国際決済負担の増加が重なり、企業の耐性をさらに弱めている。自社の耐久力を「低い」とみる企業は23.7%に達した。
Ban IVは、地政学リスクはもはや一時的な事象ではなく、新たな国際秩序のもとで長期化かつ複雑化する可能性があるとみている。このため政府に対し、利子補給、返済期限の見直し、債務返済の猶予、短期資金へのアクセス改善、付加価値税の還付迅速化などを早急に講じるように提言した。とりわけ、製造業、輸出産業、農業、中小企業への支援が重要であるとしている。
あわせて、官民の情報共有を強化し、エネルギー市場、国際輸送、物流費、業種別サプライチェーンに関する早期警戒体制を整える必要があるとも指摘した。供給源の多角化や代替輸送ルートの確保、新市場の開拓を進めることで、特定地域や高リスクの供給先への依存を減らすべきであるとしている。
政府は足元で燃料市場の安定策を進めている。価格安定基金は約1カ月で9回活用され、拠出額は約5兆3000億ドン(約321億2860万円)に達した。3月27日夜にはチン首相が、国益上必要な場合、ガソリン、軽油、航空燃料にかかる環境保護税と特別消費税をゼロに引き下げる方針を決定した。
企業側は、原油や燃料価格、供給途絶の兆候を政府が継続的に監視し、国内エネルギー価格の急変を抑える機動的な運営を求めている。政策運用の安定性と一貫性を高め、行政手続きの負担を軽減することが、企業が経営資源を生産やリスク対応に振り向ける前提になるとの声も強い。
アジア開発銀行(ADB)もこれに先立ち、ベトナムを含む東南アジアの新興国が中東紛争の影響を最も大きく受けるとの見方を示していた。原油高と供給網の寸断によって、生産・輸送コストが急騰し、戦況次第では域内各国の国内総生産(GDP)を0.6〜2.3%押し下げ、インフレ率を最大3ポイント押し上げる可能性があるとしている。






































