<写真:thesaigontimes.vn>
ベトナム南部のホーチミン市で計画されているバス運賃の無料化について、専門家は短期的な利用者増には寄与するものの、バイク利用からの転換には不十分との見方を示した。
ホーチミン市は2026年5月にも、手続き完了と承認を前提に市内135路線のバス運賃を無料化する方針である。
移動コストの軽減を通じて公共交通の利用を促し、渋滞や大気汚染の抑制を狙う。全市民を対象とした全面無料化は初めてとなる見込みである。
ホーチミン市国家大学の循環型経済発展研究所長、グエン・ホン・クアン氏は、燃料価格の高騰を背景にした社会保障的意義を認めつつも、「無料化は決定的要因ではない」と指摘する。
もともとバス運賃は低水準であり、最大の障壁ではないためである。
クアン氏によれば、国内外の事例では無料化により利用者が即座に20~30%増加するケースがある。
ホーチミン市でも祝祭日などの無料化施策で利用者増が確認されているが、長期的な定着にはサービス品質が最も重要とされる。
定時性や利便性、安全性、清潔さが確保されて初めて利用者の継続利用につながるという。
同市のバスは180路線、約2400台で運行されているが、2025年の利用者数は約9700万人にとどまり、交通手段に占める割合は1.6%と目標の7.23%を大きく下回る。
一方、ホーチミン市内の車両数は約1300万台に達し、このうち約1130万台がバイクで、個人交通が圧倒的多数を占める。
遅延の常態化も課題である。交通渋滞により所要時間が安定せず、バスの競争力を低下させている。
路線網も幹線道路中心で、住宅地や細街路へのアクセスが不十分なため、停留所までの徒歩距離が長い地域も多い。
推奨される300~500mを超え、場合によっては1km以上となり、15~30分を要するケースもある。渋滞が重なれば移動時間は1~2時間に及び、バイクの約2倍となる。
ホーチミン市旅客運輸協会のレ・チュン・ティン会長も、最大の障害は渋滞による遅延であると指摘する。
かつて導入された専用レーンが廃止されたことについて「公共交通発展の後退」との認識を示し、優先レーンの欠如が定時運行を困難にしていると述べた。
一方で車両の更新や電動バスの導入、運行管理のデジタル化によりサービス品質は改善しつつあるとされる。
交通運輸大学のグエン・ティ・ビック・ハン准教授は、無料化は「必要条件」に過ぎず、ネットワークの再編や接続性向上が不可欠と強調する。
バスと都市鉄道、自転車シェアなどとの連携強化や、優先レーン整備による定時性向上が求められる。
ホーチミン市建設局は今後、小型・環境対応型バスの導入による住宅地への乗り入れ拡大や、徒歩300~500m圏でのアクセス確保を進める方針である。
さらに旧ビンズオン省、旧バリア=ブンタウ省、ロンタイン国際空港への接続路線や夜間バス、需要応答型交通の検討も進める。
2030年までに全バスを電動化・グリーン化する目標も掲げる。
もっとも、専門家と行政はいずれも、個人車両の抑制策と並行しなければ効果は限定的との認識で一致する。
無料化とともに、公共交通の利便性と接続性を総合的に高める取り組みが不可欠である。




































