<写真:dantri.com.vn>
世界的な気温上昇に影響を与えるエルニーニョ現象について、2026年後半にかけて「スーパー・エルニーニョ」が発生する可能性が指摘されている。これにより世界の平均気温が過去最高水準に達するリスクが高まっている。
米国海洋大気庁(NOAA)傘下の気候予測センターによれば、現在のラニーニャ現象は数週間以内に終息し、2026年夏にかけて約62%の確率でエルニーニョへ移行する見通しである。
エルニーニョは熱帯太平洋の海面水温上昇を特徴とし、降雨や干ばつ、台風、熱波など、世界各地の気象に広範な影響を及ぼす現象である。
欧州の統合モデルなどは今回の事象が海面水温偏差2℃以上となる「スーパー・エルニーニョ」に発達する可能性を示しており、民間予測ではその確率は約15%とされる。
こうしたENSO(エルニーニョ・南方振動)の変動は、東南アジアの中でも特にベトナムに強い影響を及ぼす。世界銀行の分析では、ENSOは同国の農業、生産活動、生活全般に影響を与える主要な気候要因と位置付けられている。
南北に細長くモンスーンの影響を強く受ける地理的特性から、同一の現象でも地域ごとの影響差が大きい点が特徴である。
エルニーニョ発生時のベトナムでは、降水量の減少が顕著となる傾向がある。全国的には降水量が25〜50%減少する可能性があり、中部地域でも10〜30%程度の減少が報告されている。
この結果、中部や中南部では水不足が深刻化しやすく、貯水池の水位低下や水力発電への影響、農業用水の不足が連鎖的に発生する。特に農業分野ではコメなど主要作物の収量低下につながり、食料供給や農村所得にも影響を及ぼす。
気温面でも影響は大きい。南部では36〜37℃級の猛暑が長期化する事例が確認されており、エネルギー需要の増加や健康リスクの拡大が懸念される。さらにメコンデルタでは海水の遡上が強まり、塩害のリスクが高まる点も重要である。
一方で近年は、単純な乾燥傾向にとどまらず、降雨の偏在化が進行している。雨量自体が平均並みであっても、短時間に集中する豪雨が増加する傾向が指摘されている。
ENSOと降水の関係については、一般にエルニーニョで降雨減少、ラニーニャで増加という傾向があるものの、地域差が大きく、局地的には極端な降雨が発生し得る。実際、ベトナムでは近年、洪水被害も頻発しており、干ばつと洪水が併存するリスク構造へと変化している。
2026〜2027年にかけては、気候の不安定化がまず顕在化し、地域ごとに干ばつと豪雨が混在する状況が想定される。
その後、エルニーニョの遅効的な影響により気温上昇が顕著となり、エネルギー需要の逼迫や健康被害の拡大が懸念される。さらに中長期的には、極端気象の頻度自体が高まる可能性がある。
本質的なリスクは、エルニーニョ単体ではなく地球温暖化との複合効果にある。ENSOが異常気象の発生頻度を高め、温暖化がその強度を増幅する構図である。
ベトナムは長い海岸線と低地人口の多さという構造的条件を抱えており、気候変動の影響を受けやすい国の1つである。
以上を踏まえると、今回想定されるエルニーニョは、干ばつ、水不足、猛暑の長期化、豪雨の集中化といった複合的リスクをもたらす可能性が高い。
スーパー・エルニーニョの発生自体は不確実性を伴うが、気候変動によって振れ幅が拡大していることは明らかである。
ベトナムにおいては、単なる気温対策にとどまらず、水資源管理、農業の適応、防災インフラの強化を含めた総合的対応が不可欠な局面に入っている。






































