<写真:dantri.com.vn>
ベトナム人の平均寿命は約73.6歳と世界平均を上回っているが、健康寿命は65.2歳にとどまっている。
世界保健機関(WHO)によれば、多くの人が人生の終盤におよそ10年近く、病気や身体機能の低下、医療への依存を抱えながら過ごす可能性がある。
その背景には、高齢化に伴う生物学的な老化だけではなく、若い頃からの生活習慣や予防への意識の弱さがある。
国連人口基金(UNFPA)による2021年のベトナム人口変動調査では、高齢者の11.7%が少なくとも1つの身体機能に障害を抱えていた。
歩行や階段の昇降に困難を感じている人も約9%に上り、記憶力や集中力に支障を感じる人も約6%いた。こうした傾向は、より高齢の層ほど強まる。
非感染性疾患の危険因子も、比較的早い段階から蓄積している。
WHOの2021年調査によれば、直近30日以内に飲酒した人は14.7%であり、日常的に塩や塩辛い調味料を追加している人は78.2%に達している。
平均塩分摂取量も1日8.1gと高く、22.2%はWHOが推奨する身体活動量を満たしていない。こうした生活習慣の積み重ねが、将来の健康状態に大きく影響している。
さらに深刻なのは、病気の発見が遅れがちである点である。高血圧は患者のうち把握されているのが40.2%、糖尿病は35%にとどまる。
がんについても、Globocan 2022によれば新規患者数は18万人超、死亡者数は12万人超に達しており、その7割以上が進行してから見つかっている。
心不全や不整脈などの循環器疾患でも、早期発見への関心は十分に高いとは言い難い状況である。
症状が出てから医療機関を受診するという行動様式も、重症化を招く要因となっている。子宮頸がんやB型肝炎のように、初期には自覚症状が乏しい病気は少なくない。
だからこそ、定期健診や各種検診を受けているかどうかが、その後の治療成績や予後を大きく左右する。
早期発見の重要性は、日本との比較によってもより鮮明になる。日本の平均寿命は84.5歳、健康寿命は73.4歳であり、いずれも高い水準にある。
がんの年齢調整罹患率は高いものの、死亡率は低く抑えられており、その背景には検診による早期発見の積み重ねがあるとみられる。
ベトナムでも、自主的に健康診断を受ける仕組みは広がり始めている。
3月にはハノイ市の日本メディカルセンターT-Matsuoka内で、高度検診、診断、治療方針の提示を組み合わせた「Nura Premium」が開業した。
健康な老後は、高齢期に入ってから急いで備えるものではなく、若い時期から生活習慣を整え、定期的に検診を受けることを積み重ねてこそ形づくられる。
その認識を社会全体で共有できるかどうかが、今後のベトナムにとって重要な課題となる。

































