<写真:laodong.vn>
国際労働機関(ILO)は2026年4月1日、ベトナムにおける最低賃金の影響に関する報告書を公表した。
近年、最低賃金は継続的に引き上げられてきたが、インフレの影響などにより実質賃金の伸びは限定的であり、労働者の生活実感としては十分ではないとの認識が浮き彫りとなっている。
報告によれば、最低賃金の平均賃金に対する比率は、2012年の44%から2016年には58%へ上昇したものの、その後は低下し、2023年には50%となった。
新型コロナウイルス禍以降は引き上げのペースも鈍化しており、実質的には横ばいに近い状況が続いている。
2023年時点では、週35時間以上働く労働者のうち、月額最低賃金を下回る者は約3.8%、時間給ベースでは約3.3%にとどまっている。
一方で、女性、高齢者、低学歴層において低賃金の割合が高い傾向が確認されている。民間企業や外資系企業では、最低賃金未満の割合は比較的低い水準にある。
地域別に見ると、中部高原およびメコンデルタにおいて低賃金労働が多く、主な分野は農業、宿泊・飲食業、食品製造業である。
職種別では、事務職、公務員、サービス業、販売職において最低賃金未満の割合が高い。
2012年から2023年までのデータ分析の結果、最低賃金の引き上げが雇用や労働時間、企業の売上や利益に与える影響は限定的であるとされた。
その背景には、最低賃金水準が市場賃金と比較して相対的に低いことがあると考えられる。
企業側は、最低賃金の引き上げによって人件費や社会保険負担が増加する点を指摘している。
例えば、従業員約7000人を抱える繊維企業では、月額28万ドン(約1690円)の引き上げにより年間約50億ドン(約3013万円)のコスト増になるとされる。
そのため、省力化投資やコスト削減、さらには低賃金地域への移転を検討する動きも見られる。
労働者にとっては、賃上げによって収入は増加するものの、生活費を十分に賄うには依然として不十分であるとの声が多い。
他方で、社会保険料の増加により将来の給付が改善されるという側面も存在する。
ILOは、最低賃金の調整にあたっては透明性と予見可能性を確保しつつ、労働者の生活需要と経済状況とのバランスを取る必要があると提言している。
また、実質所得の向上にはインフレ抑制が不可欠であり、生産性の向上や労使間の団体交渉の強化といった広範な政策との連携が重要であると指摘している。
なお、2026年1月1日から適用された地域別最低賃金は、第1地域が月531万ドン(約3万2000円)、第2地域が473万ドン(約2万8500円)、第3地域が414万ドン(約2万5000円)、第4地域が345万ドン(約2万800円)である。





































