<写真:baolaocai.vn>
ベトナムでは、バイオガソリン「E10」への切り替えに向けた準備が加速している。
政府が2026年4月中の導入拡大を求めていることを受け、石油販売各社は貯蔵設備の改修やエタノール調達を急いでいる。
足元の燃料価格上昇も追い風となり、消費者の受け入れ姿勢は徐々に強まっている状況である。
利用者がE10に注目する最大の理由は価格差にある。
E10は従来のガソリンより1L当たり約600〜1000ドン(約3.62〜6.03円)安く、家計負担の軽減につながるとの見方が広がっている。
すでにオートバイと自動車の双方でE10へ切り替える利用者も現れている。
一方で、車種や年式による適合性や燃料系統部材への影響を懸念する声は依然として根強く、政府や企業による周知徹底を求める意見が多い。
販売現場においては、価格競争力と安定供給が普及の前提条件とみられている。
小売事業者の間では、過去のE5販売時に品質のばらつきや供給途絶、利幅の薄さにより苦戦した経験があり、今回は十分な卸値差益と継続的な供給が不可欠であるとの指摘が出ている。
品質管理を一段と厳格化し、消費者の信頼を回復できるかが焦点である。
ベトナム石油グループ(ペトロリメックス)によれば、2025年8月1日の試験導入以降、E10の品質に関する顕著な苦情は確認されていない。
販売量も増加傾向にあり、消費者の警戒感はやや薄れつつある。ホーチミン市などの都市部では、環境負荷の低減を評価してE10を選択する利用者も増加している。
一方で、最大の課題は原料エタノールの確保である。
E10の本格展開には月10万〜11万㎥程度のエタノールが必要とされるが、国内には6つの生産設備があるにもかかわらず、稼働しているのは3工場にとどまる。
実際の生産量は月2万5000㎥前後であり、需要の4分の1強しか賄えていない。
仮にフル稼働した場合でも国内需要の約4割にとどまる見通しであり、不足分は米国やブラジルからの輸入に依存する構図となっている。
こうした状況を受け、石油各社は供給網の強化を急いでいる。
ペトロリメックスは既存のE10販売網の拡充に加え、タンクや油槽所の改修、エタノール調達体制の整備を進めている。
米国は世界最大のエタノール生産国であり、同社は米国側との協議も進めている。
ベトナム石油総公社(PVOIL)も、国内製油所からの調達に加え、アジア域内での輸入先の多様化を推進している。
さらに、国内コンデンセートを活用した調合を拡大し、全国13拠点でE5およびE10の供給体制を整備する方針である。
運用面では大きな混乱は生じないとの見方が多い。
すでにE5を取り扱ってきた事業者にとっては、ポンプの再検定やゴム部品の点検といった追加対応により移行が可能とされる。
国防省系の石油販売網においても、E5運用の経験を踏まえればE10への切り替えは管理可能な範囲にあるとみられている。
供給面では、ズンクアット製油所を運営するビンソン製油石化が年初からバイオ燃料生産を再開している。
現在は能力の約75%で稼働しており、今後は100%まで引き上げる計画である。
E100およびE10の調合設備もおおむね整備されており、本格供給に向けた準備が進められている。
E10の普及は、価格優位性のみならず、品質保証と情報提供、さらには原料確保の成否に大きく左右される。
政府主導による導入前倒しが、ベトナムの燃料市場改革をどこまで前進させるかが問われている。





































