<写真:tuoitre.vn>
近年、虫歯や歯肉炎といった従来型の口腔疾患に加え、小児歯科領域では「大臼歯・切歯低石灰化(MIH)」と呼ばれるエナメル質形成異常が注目されている。
これは全身的要因に由来する発育障害であり、主に第一大臼歯や前歯に発現し、白色から褐色の境界明瞭な混濁や脆弱な歯質として現れる。
同疾患は知覚過敏や清掃困難を招き、虫歯リスクを高めるほか、重症例では早期抜歯に至ることもあり、子どもの口腔健康に深刻な影響を及ぼす。
世界的な有病率は平均10〜14%とされるが、地域によっては40%を超えるなど増加傾向にある。
ベトナムでも10〜22%と報告されており、重要な公衆衛生上の課題となりつつある。
発症は単一の原因によるものではなく、妊娠期、周産期、出生後の要因が複雑に関与する多因子疾患である。
母体の栄養状態や感染症、早産や低出生体重、乳幼児期の感染症や抗生物質の使用などが関連するとされる。
近年はとりわけ環境要因の影響が注視されている。
大気汚染物質(二酸化硫黄、二酸化窒素、PM10、PAHsなど)はエナメル質形成細胞に直接または間接的な障害を与える可能性があり、汚染地域の子どもほど発症率が高いとする研究もある。
また、鉛や水銀などの重金属は体内に蓄積し、細胞障害や内分泌異常を通じて歯の発育に悪影響を及ぼす。
さらに、プラスチック原料に含まれるビスフェノールA(BPA)などの内分泌かく乱物質の関与も指摘されている。
これらの環境要因は、①エナメル形成細胞への直接的な毒性、②呼吸器疾患など全身状態の悪化を介した間接的影響、③遺伝子発現を変化させるエピジェネティクス機構という3つの経路で作用すると考えられている。
専門家は、子どもの歯の健康を守るためには、従来の口腔ケアに加え、環境汚染への対策や妊娠期・乳幼児期の健康管理が不可欠であると指摘している。






































