〈写真:tuoitre.vn〉
低迷が続いていたIPO(新規株式公開)市場が回復の兆しを見せている。
ここ半年間の停滞を経て、多くの企業が数億ドルから数十億ドル規模のIPO計画を相次いで公表している。
直近では、家電小売大手ディエンマイサインがIPOと株式上場に向けた説明会を開催し、会場には300人以上の投資家や仲介業者が集まった。
同時に配信されたライブ配信には1万1300人超が視聴し、市場関係者はIPO熱の再燃を示す象徴的な動きとみている。
同社は2026年初の10億ドル(約1500億円)規模案件で、企業価値は約39億ドル(約5850億円)とされる。
1億8000万株の公募は6月末に終了し、7月初旬にホーチミン市場へ上場する見通しである。準備開始から完了まで9カ月未満と、異例のスピードで進行している。
このほか、証券会社LPBSは1億4180万株超を1株3万ドン(約177円)で公募する計画を発表した。
証券会社カフィも約2兆5000億ドン(約150億円)を調達するIPO計画を打ち出している。
創業30年以上のバオティン・マインハイやダットベトVACも、財務状況や株主構成の情報開示を進め、IPOに向けた準備を本格化させている。
バオティン・マインハイは第4四半期の上場を予定し、売上高や利益などの詳細を公表した。
ダットベトVACも投資家向け説明を強化し、年後半での実施を視野に入れるが、市場動向や投資家の関心、法的手続きの進捗に左右されるとしている。
資産運用分野では、PHFMがETF「PHFM VNSHINE」の募集を6月22日まで実施中である。
外食分野では、ハイランズコーヒーを傘下に持つジョリビー・フーズが同チェーンのIPOと上場を2027年初めに検討している。
IPO再活性化の背景について、ベトキャップ証券の分析責任者は、2026年9月にベトナム株式市場が新興国セカンダリー市場へ格上げされる見通しを挙げる。
これにより、60億〜80億ドル(約9000億〜1兆2000億円)、好条件下では最大100億ドル(約1兆5000億円)規模の海外資金流入が見込まれ、その多くがIPO案件に直接投資される可能性がある。
一方、企業側の狙いも多様化している。PHFMはETF投資拡大と外国資金流入を見込み募集を実施する。
ディエンマイサインは、上場を通じて企業価値の透明化や独立した経営体制の構築を目指すとしている。
市場調査会社フィングループは、年内のIPO件数は増加する一方で、1件あたりの調達規模は縮小する可能性があると指摘する。
IPOによる総調達額は約50兆ドン(約3000億円)規模で、2025年と同程度かやや上回る水準にとどまる見通しである。
ただし、マクロ環境は依然として厳しい。銀行システムの流動性低下により金利が高止まりし、株式市場の魅力が相対的に低下している。
さらに中東情勢や貿易摩擦の影響でコストが増加し、企業の利益率や成長見通しにも圧力がかかっている。
投資家の姿勢も変化している。2025年にはIPO時に需要が集中した銘柄が、上場後に株価下落するケースが見られたことから、個人投資家を中心に慎重姿勢が強まっている。
現在は企業の成長性や経営力、適正なバリュエーションがより重視されている。
こうした環境のもと、企業側も戦略を見直している。
短期的な資金調達を狙うのではなく、経営・法務・財務の再構築やガバナンス強化を進め、長期的視点でIPO準備を進める動きが広がっている。






































