〈写真:dantri.com.vn〉
中東情勢の緊迫化を受け、ベトナムの食品・飲料業界で原材料や物流などの調達コストが上昇している。
業界関係者によると、主要な投入コストは5〜10%上昇し、一部原料では15%に達しており、企業収益を圧迫している。
ホーチミン市食品食糧協会のリー・キム・チー会長は9日、エネルギー、物流、農産原料の3分野で同時に値上がりが進行していることを指摘した。
原油や天然ガスの高騰は生産コストを押し上げるだけではなく、プラスチックやアルミ包装材の価格上昇にもつながっている。
さらに、国際海運ルートの混乱により輸送費も上昇しており、砂糖、植物油、穀物、食品添加物などの輸入原料価格は5〜10%上がったという。
肥料価格の上昇も農産物価格を押し上げている。中東は肥料の主要供給地の1つであり、その影響が食品加工業全体の原価に波及している。
チー会長によれば、業界企業が使用する原材料のうち50〜60%で、輸入品、国内調達品の双方に値上がりが及んでいる。
企業側では、コスト増に加え、調達そのものも難しくなっている。
ホーチミン市で香辛料や乳業向け原料を輸入する企業の幹部は、世界的な供給不足は起きていないものの、ベトナム向け輸送は難度を増していると説明した。
紛争発生後は運賃上昇に加えて冷蔵コンテナ不足が続き、納期遅延が相次いでいるという。
同社は販売価格の維持に努めているが、原料によっては調達コストが7〜15%上昇し、利益率は縮小している。状況が長引けば、価格改定は避けにくいとの見方である。
もっとも、現時点で小売価格への転嫁は限定的にとどまっている。
大手企業の多くは通常3〜6カ月分の原料在庫を確保しており、短期的には価格を据え置いているためである。
一部企業は供給維持と市場安定を優先し、利幅の縮小や採算割れも受け入れている。
ただ、在庫の取り崩しが進めば、エネルギーや物流コストの高止まりを背景に、小売価格への上昇圧力は今後一段と強まる公算が大きい。
一方、市場の成長余地はなお大きいとの見方もある。
インフォーマ・マーケッツのASEANプロジェクト統括責任者ローズ・チタヌワット氏は、食品は生活必需分野であり、需要は底堅いと指摘した。
ベトナムを訪れる外国人旅行者数も高水準を維持しており、観光需要が食品・飲料市場を下支えしているという。
ただし、業界には構造的な課題も残る。中小企業の比率が高く、大手企業が品質管理体制を整えているのに対し、特に屋台などの小規模事業者では食品安全の確保が難しい。
このため、消費者や訪越外国人観光客の信頼維持に課題を抱えている。
チタヌワット氏は、世界的に需要が拡大するハラール市場への展開余地にも言及し、国際基準への適合に向けて、製品、工程、認証への計画的な投資が必要であると強調した。
専門家は、コスト上昇局面で価格競争に依存する経営は限界に近づいているとみている。
ベトナム食品科学技術協会のホアン・キム・アイン副教授は、輸入依存を減らすため国産原料の活用を進めるとともに、生産工程を改善し、ロス削減と効率向上を図るべきであると提言した。
さらに長期的には、一次産品のまま輸出するのではなく、高付加価値の深加工へ軸足を移すことが持続的成長につながるとの見方を示した。
足元のコスト環境は厳しいものの、業界全体としては成長を維持している。
年初2カ月の鉱工業生産指数は13.2%上昇し、第1四半期の輸出額は166億9000万ドル(約2兆6586億円)と前年同期比5.9%増で、過去6年で最高となった。
コスト高のなかでも、ベトナムの食品・飲料産業は拡大基調を保っている。
































